コラム

発熱外来の院外待機をどう運用するか。車内・院外で待ってもらう仕組みと決めておくこと

COLUMN

診察待ち・受付

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「発熱外来の院外待機」というコラムの見出し画像

発熱外来で待合室が混み合う実情

発熱のある患者さんを一般の外来患者さんと同じ待合室で待たせないようにしたい。多くのクリニックがこの課題を抱えたまま、駐車場の車内や院外での待機を、受付スタッフの電話や声かけで回しています。

外来の負荷の大きさは、公的統計からも読み取れます。厚生労働省の患者調査によれば、令和5年10月の調査日に一般診療所で外来受療した推計患者数は4,494.3千人で、病院の1,516.9千人の約3倍にあたります(厚生労働省 患者調査 P.4 表1)。傷病分類別にみると、一般診療所の外来では「呼吸器系の疾患」が553.4千人、「感染症及び寄生虫症」が120.8千人となっています(同 P.6 表2)。傷病分類別の集計で発熱の有無そのものを示すものではありませんが、外来の多くをクリニックが受け止めていることは数字から読み取れます。

一方で、待ち時間そのものへの評価は厳しいままです。厚生労働省の受療行動調査では、病院の外来患者が「不満」と答えた割合が最も高い項目は「診察までの待ち時間」で、25.2%にのぼります(厚生労働省 受療行動調査 P.12 図11。調査対象は病院の外来患者で、診療所単体の集計ではありません)。院外で待ってもらう運用は、待合室の混雑を分けるだけでなく、「いつ呼ばれるか分からないまま待つ」状態をどう減らすかという課題でもあります。

院外待機を電話の呼び出しだけで回すと、次のような負担が受付に集中します。

  • 発熱の患者さんが来るたびに、駐車場の車種や場所を聞き取ってメモする
  • 診察の順番が近づくたびに、患者さんの携帯電話へ1件ずつ電話をかける
  • 電話に出ない方への折り返しと、その間に来院した一般の患者さんの受付を並行する

受付が1人体制の時間帯があるクリニックほど、この並行作業がそのまま待ち時間の延びにつながります。

院外待機の運用で決めること

クリニックの駐車場に停めた車の中で、スマートフォンを見ながら順番を待つ患者さんのシルエット
駐車場の車内で、スマートフォンに届く呼び出しを待つ場面のイメージ

仕組みを選ぶ前に、院内で決めておく論点は5つあります。

論点決める内容決めないと起きること
最初の受付窓口発熱の患者さんに、来院前の電話か、到着後の電話・インターホンのどれで連絡してもらうか患者さんがそのまま待合室へ入ってきてしまう
受付の担当誰が症状と連絡先を聞き取り、番号を発行するか担当があいまいなまま、一般の受付と兼務で抜けが出る
待機場所車内・院外のどこで待ってもらうか。車で来院しない方の待機場所をどうするか徒歩や公共交通機関で来た方の行き場がなくなる
呼び出し方法電話・LINE通知・スタッフの声かけのどれを基本にするか呼び出しのたびに受付が電話をかけ続ける
院内への入り方呼ばれた患者さんがどの入口から、誰の案内で診察室へ向かうか呼び出し後に一般の待合室を通ってしまう

動線と待機場所を確かめたうえで、運用の中心になるのが呼び出し方法です。matoca for クリニックのように、事前呼び出しで「残り○組」になった時点で自動通知する仕組みを使うと、順番が近づいたことを患者さんのスマートフォンへ自動で知らせられるため、患者さんは院外で待てます。何組前で知らせるかは、駐車場から診察室までの移動時間と、1人あたりの診察時間の目安から逆算して決めます。

ただし、全員がスマートフォンで通知を受け取れるわけではありません。総務省の通信利用動向調査では、スマートフォンを保有している世帯の割合は91.8%、6歳以上の個人でのスマートフォン保有割合は78.9%です(総務省 通信利用動向調査 令和7年 別紙2 P.2)。世帯で9割を超えていても、個人では約2割が保有していない計算になります。スマートフォンを持たない方には受付から電話で呼び出す、付き添いのご家族の端末で通知を受け取ってもらう、といった代わりの手段を、最初から運用ルールに入れておく必要があります。

受付そのものは、これまでどおりスタッフが担います。電話やインターホンで症状と連絡先を聞き取り、番号を発行して、呼び出しの方法を案内する。この流れを変えずに、「呼び出しの電話」の部分だけを通知に置き換えるのが、受付の負担を増やさない進め方です。

運用開始までの流れ

院外待機は、いきなり全面的に切り替えるより、段階を踏むほうが現場が混乱しません。

  1. 院内の動線を確認する: 発熱の患者さんが通る入口・待機場所・診察室までの経路を図にして、一般の患者さんの動線と重ならないかを確かめる
  2. 受付の手順を書き出す: 電話を受けたスタッフが聞き取る項目(症状・来院手段・車種・連絡先)と、番号の発行から呼び出しの案内までを1枚の手順書にまとめる
  3. 呼び出しの設定を決める: 何組前で通知するか、通知に気づかない方へ何分後に電話でフォローするかを決める
  4. 院内で試す: 診療時間外や比較的空いている時間帯に、スタッフ同士で受付から呼び出しまでを一通り試す
  5. 患者さんへ周知する: ホームページ・院内掲示・電話の案内で、発熱時の来院方法を伝える
  6. 振り返る: 運用開始から数週間後に、呼び出しの遅れや電話でのフォロー件数を確かめ、通知のタイミングを調整する

5の周知は、到着時の掲示も役立ちますが、待合室へ直接入ることを防ぐために来院前の案内を優先します。電話予約の案内文に院外待機の流れを一言添えておくだけでも、到着後に待合室へ入ってしまうケースを減らせます。

医療現場での実例

発熱外来に限った事例ではありませんが、院外で待てる仕組みを段階的に取り入れた実例があります。石川県野々市市のとりい皮膚科クリニックでは、LINEで順番を取れる仕組み「matoca」を導入した際、最初から院内・院外の両方で発券できる体制にすると、スタッフと患者さんの双方が混乱する懸念があったといいます。そこで、まず院内で整理券を発券する運用から始め、スタッフも患者さんも慣れた頃に院外からも発券できる体制へ切り替えたと、統括マネージャーの端谷奈美さんが話しています(導入事例:とりい皮膚科クリニック)。同院1施設の取材内容であり、他の医療機関で同じ進め方が合うとは限りません。

発熱外来の院外待機とは場面が異なりますが、段階的に導入する考え方は参考になります。院外待機を始めるときも、まず受付スタッフによる番号発行と呼び出しの手順を院内で固め、通知の運用に慣れてから対象を広げる順番にしておくと、切り替え時の混乱を抑えやすくなります。

順番待ちの仕組みの全体像や、院内表示型・LINE通知型の違いは「診察待ちシステムとは」で整理しています。発熱外来の動線や院外待機の運用を自院に合わせて設計したい場合は、お問い合わせから現在の受付体制をお聞かせください。

出典

  1. 厚生労働省 患者調査(令和5年 推計患者数、P.4 表1・P.6 表2)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/dl/suikeikanjya.pdf/2026年10月7日 取得
  2. 厚生労働省 受療行動調査(令和5年 項目別満足度、P.12 図11)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jyuryo/23/dl/gaisu-kekka2023.pdf/2026年10月7日 取得
  3. 総務省 通信利用動向調査(令和7年 別紙2 P.2 情報通信機器の保有状況)https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/260529_1.pdf/2026年10月7日 取得
  4. 株式会社ブレイブメディカ 導入事例「とりい皮膚科クリニック」(統括マネージャー 端谷奈美さんへの取材)https://bravemedica.co.jp/case/toriicl//2026年10月7日 取得

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