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インフルエンザなどの感染症が流行し始めると、小児科の待合室は一気に席が埋まります。発熱のある子どもと、予防接種や乳幼児健診で来た子どもが同じ時間帯に重なり、受付は番号の案内と電話の呼び出しに追われる。毎年この時期を「乗り切る」ものとして迎えているクリニックは少なくありません。
小児の外来がもともと多いことは、公的統計からも読み取れます。厚生労働省の患者調査によれば、令和5年10月の外来受療率(人口10万対)は全年齢の総数が5,850であるのに対し、0歳は6,467、1〜4歳は6,291と、総数を上回っています(厚生労働省 患者調査 P.9 表4)。同じ資料では、外来の「0〜14歳」の受療率が、令和5年に昭和59年以降で最も高くなったとも示されています(同 P.9)。
その受け皿の多くはクリニックです。1〜4歳の推計外来患者数約21万人のうち、一般診療所で受療したのは約17万人で、8割にあたります(厚生労働省 患者調査 P.4 表1)。なお、いずれも10月の調査日の数値で、感染症の流行期だけを切り出したものではありません。調査日時点でも小児の外来の多くをクリニックが受け止めており、流行期にはそこへさらに患者さんが加わる、という前提で受付の体制を考える必要があります。
待つこと自体への評価も厳しいままです。厚生労働省の受療行動調査では、病院の外来患者が「不満」と答えた割合が最も高い項目は「診察までの待ち時間」で、25.2%でした(厚生労働省 受療行動調査 P.12 図11。調査対象は病院の外来患者で、診療所単体の集計ではありません)。
小児科ならではの事情もあります。
混雑の正体は、来院する人数の多さだけではありません。「いま何番まで進んでいるか分からないから、待合室を離れられない」「離れた人を電話で呼び戻す」という、待ち方と呼び出し方の組み合わせが、席と受付の手を同時にふさいでいます。

流行期の運用は、混み始めてから考えると現場が回りません。院長・事務長が事前に決めておく論点を整理すると、次のようになります。
| 論点 | 決める内容 | 決めないと起きること |
|---|---|---|
| 受付の時間帯と動線 | 発熱のある子どもと、予防接種・健診の子どもを時間帯や入口で分けるか | 目的の違う患者さんが同じ待合室に集中する |
| 通知のタイミング | 順番の何組前で保護者に知らせるか。混雑時に何組前へ早めるか | 戻りが間に合わず、電話での呼び戻しが続く |
| 待機してよい場所 | 車内・院外・近隣での待機を認めるか、どこまでなら戻れるか | 待合室に保護者ときょうだいがとどまり、席が足りなくなる |
| キャンセルの受け方 | 待ちきれずに帰る保護者から、どの手段でキャンセルを受け付けるか | 無断で帰った方の番号を呼び続け、後ろの順番が詰まる |
| 連絡手段がない方への対応 | スマートフォンで通知を受け取れない付き添いの方を、誰がどう呼ぶか | 通知に頼れない方だけが待合室から動けなくなる |
| 院内からのお知らせ | 予防接種の受付状況や休診日を、電話以外の手段でどう伝えるか | 問い合わせの電話が呼び出しの電話とぶつかる |
このうち、電話での呼び戻しを減らすためにまず検討したいのが「通知のタイミング」です。matoca for クリニックのように、順番が近づいた時点で保護者のスマートフォンへ自動で知らせる仕組みを使えば、保護者は待合室を離れて車内や院外で待てます。何組前で知らせるかは、駐車場や近隣から受付まで戻る時間と、1人あたりの診察時間の目安から逆算します。流行期は診察の進み方も平常期と変わるため、「平常期は何組前、混雑時は何組前」と2段階で決めておき、切り替えの判断を誰がするかまで決めておくと迷いません。
通知の受け手は、患者さん本人ではなく保護者です。総務省の通信利用動向調査では、スマートフォンを保有している個人の割合は、20〜59歳の各年齢階層で90%以上、60〜69歳で88.6%です(総務省 通信利用動向調査 令和7年 P.3 図表1-4)。ただし、スマートフォンを持っていることと、その場で通知を受け取れる設定になっていることは別です。祖父母が付き添う日もあります。受付で番号を発行するときに通知の登録ができているかを確かめ、できない方には受付から電話で呼ぶ、戻ってほしい時刻を口頭で伝える、といった代わりの手段を、最初から運用ルールに入れておきます。
小児科で特に気をつけたいのは、通知を受け取るのが付き添いの保護者だという点です。受付で番号を渡すときに、通知が届いたら子どもを連れて何分で戻れるか、きょうだいを連れて車で待つのか近所で待つのかを一言確かめておくと、通知のタイミングが合っているかを後から見直す材料になります。
流行期の真っただ中に新しい仕組みへ切り替えると、スタッフも保護者も慣れないまま混雑を迎えます。準備は平常期のうちに済ませる順番にします。
4を流行期の前に置くのがポイントです。仕組みに慣れたスタッフが、慣れた保護者を相手に流行期を迎えるのと、どちらも初めての状態で迎えるのとでは、受付の負担が大きく違います。
小児の救急を専門とする病院の実例ですが、呼び出しの負担と流行期の情報発信の両方に関わる取材があります。大分県大分市の大分こども病院では、2024年7月にLINEヤフー株式会社のLINEを活用した順番待ちシステム「matoca」を導入しました。医事課外来副主任の麻生紗季さんによると、それまで6割ほどだった「順番通りに待合室へ戻ってこられる患者さん」の割合が8割以上になり、電話での呼び出しがほぼ不要になったといいます。LINE公式アカウント登録者数も、導入前の2,500人程度から導入1カ月で7,800人まで増えたとのことです(導入事例:大分こども病院、2024年9月取材時点)。
流行期の運用に直結する話もあります。同院では通常、10番前になったら通知が届くように設定し、忙しいときには15番前へタイミングを変えて使っていると麻生さんは話しています。また、LINE公式アカウントでインフルエンザワクチン接種などの情報を発信したところ、電話での問い合わせが減り、スタッフの負担が軽くなったとのことです(同)。
いずれも同院1施設の取材時点の数値・内容で、他の医療機関で同じ結果になることを示すものではありません。同院は24時間診療を行う病院で、外来の規模もクリニックとは異なります。それでも、「混雑時に通知を早める」「問い合わせの多い情報を電話以外で先に出す」という考え方は、クリニックが自院の受付体制に合わせて取り入れる際の参考になります。
順番待ちの仕組みの全体像や、院内表示型・LINE通知型の違いは「診察待ちシステムとは」で整理しています。流行期の待合室の動線や、通知のタイミングを自院の受付体制に合わせて設計したい場合は、お問い合わせから現在の運用をお聞かせください。
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