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調剤薬局の待ち時間とは、患者さんが処方せんを出してから交付口に呼ばれるまでの、患者さんが待っている時間のことです。受付・入力・調剤・監査・交付と服薬指導という工程が順に進むため、どこかの工程が詰まると、後続の患者さんの待ち時間にも影響する場合があります。
最初にお断りしておくと、調剤薬局の待ち時間そのものを全国規模で集計した公的統計は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。そこで本記事では、待ち時間を生む「業務量」の側から数字で構造を見ていきます。
令和6年度末の全国の薬局数は63,203施設で、前年度から375施設増えています(厚生労働省 衛生行政報告例 P.6 表5)。日本保険薬局協会の2025年8月の調査では、1薬局あたりの処方せん受付回数は2025年5月の1か月で平均1,511.7回でした(同協会 実態調査 P.9、N=4,877薬局)。厚生労働省の調剤医療費の動向でも、保険薬局1施設当たりの処方せん枚数は令和7年度3月の全数で1,276枚となっています(調剤医療費の動向 表I-2)。
同じ協会調査では、1薬局あたりの薬剤師配属数は平均3.58人、薬剤師1人あたりの月間受付回数は平均444.7回(中央値500.0回、N=4,873薬局)です(同 P.7)。一方、通常の薬剤交付・服薬指導は1件あたり平均3.5分とされています(日本保険薬局協会 管理薬剤師アンケート報告書 2024年10月 P.101。原典は令和2年度薬剤師の需給動向把握事業)。調査年の異なる数字を単純に掛け合わせた目安ですが、444.7回×3.5分で、薬剤師1人が交付と服薬指導だけに月およそ26時間を使っている計算になります。入力・調剤・監査の時間はこれに含まれていません。
待ち時間は、こうした業務量が特定の時間帯に集中したときに表に出ます。薬剤師の人数をすぐに増やせない以上、「待つ時間」を減らす工夫と並んで、「待つ場所」を待合室の外に移す工夫が現実的な打ち手になります。

調剤待ちの仕組みは、待ち時間が発生する工程のどこに手を入れるかで分類できます。患者さんが待合室の外で待てるようにするのは事前送信型と呼び出し通知型の2つで、院内番号表示型はそれを待合室の中で補う方式です。
| 方式 | 手を入れる工程 | 薬局側の運用 |
|---|---|---|
| 処方せん事前送信型 | 受付より前 | 来局前に処方せんの画像を受け取り、来局時には調剤が進んだ状態にしておく |
| 呼び出し通知型 | 調剤中の待機 | 受付後に院外で待ってもらい、お薬の準備ができたらLINEなどで知らせる |
| 院内番号表示型(補助) | 待合室での待機 | 待合室に残る方に番号とお薬の準備状況を表示で示し、口頭での呼び出しや問い合わせを減らす |
2024年の協会調査では、処方せんの画像送信機能があるサービスを導入している薬局は90.9%、電子処方せんの受付体制がある薬局は74.0%でした(管理薬剤師アンケート報告書 P.9、N=5,982薬局)。処方せんを来局前に受け取る仕組みは、すでに多くの薬局で用意されています。
調剤薬局ならではの論点は、受付より前の工程に手を入れられることです。処方せんを来局前に受け取れれば、在庫の確認や欠品時の取り寄せも来局前に始められます。
仕組みを選ぶ前に、薬局側で決めておく論点が4つあります。
同じ調剤薬局でも、立地と応需先の業種によって、優先すべき論点は変わります。
2025年の協会調査の回答薬局では、立地は診療所前が35.2%、面対応が29.1%、病院前(3区分の合計)が23.1%でした(実態調査 P.3)。立地別の1か月の平均受付回数は、診療所前1,717回、面対応1,087回、病院前(500床以上)1,909回、モール型(医療ビル含む)2,633回、病院敷地内2,792回で、薬剤師の平均配属数は診療所前3.16人、面対応2.72人です(同 P.14)。
関西を中心に保険薬局を展開するサエラ薬局では、2022年3月から呼び出しの仕組み「yoboca」を導入し、取材時(2024年12月)には6店舗で使っています。事例では、LINE登録者の獲得と投薬状況の可視化を両立し、作業効率が向上したと紹介されています(導入事例:サエラ薬局。エリアマネージャーの鈴木樹里さん、システム担当の才所浩二さんへの取材)。
導入前は、患者さんから待ち時間を聞かれるたびに、受付スタッフが調剤室まで足を運んで薬剤師に確認していたそうです。鈴木さんは、患者さん1人の対応に5分ほどかかっていたこのやりとりがなくなり、その間に他の作業ができるようになったと話しています。画面でおおよその待ち時間を把握できるようになったことで、受付でその場で答えられるようになったためです。
同薬局は、LINEで処方せんを来局前に送ってもらうサービスも行っています。才所さんによれば、LINE登録者は1店舗あたり月に80〜90人のペースで増え、初期から使っている店舗では2024年9月時点で1店舗あたり約2,500人になりました。呼び出しをきっかけにつながった患者さんが、そのまま処方せんの事前送信の利用者にもなる、という流れです。
いずれもサエラ薬局1法人の取材時点の話で、他の薬局で同じ結果になることを示すものではありません。それでも、呼び出しの仕組みを「待ち時間の短縮」だけでなく、受付と調剤室の行き来を減らす手段、そして事前送信につなげる連絡手段として設計した点は、立地を問わず参考になります。
処方せんを来局前に受け取る仕組みを検討する場合は、matoca 処方せんのように処方せんの事前送信に対応した仕組みを比較の対象に入れておくと、受付の前倒しと呼び出しの運用をあわせて設計しやすくなります。
呼び出しのタイミング、戻ってこない患者さんの扱い、欠品時の連絡、受付の列との切り分けの4点は、立地を問わず導入前に整理しておきたい論点です。自局の調剤待ちの状況について相談したい場合は、お問い合わせからお聞かせください。
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