大分県大分市にある小児を専門とする民間の救急病院・大分こども病院。同病院では患者さんの呼び出しに課題を抱えていました。順番が来ても院内におらずに不在であったり、患者さんから受診キャンセルの操作ができずに困っていたり……。スムーズな診療案内に努めるべく、2024年7月にLINEを活用した順番待ちシステム「matoca」を導入。使い始めて約2カ月が経ちましたが、すでにmatocaの効果をスタッフ一同感じているといいます。今回、大分こども病院の医事課外来副主任の麻生紗季さんにお伺いしました。
毎回サイトを確認しなくても通知が来るのが便利
忙しい時には1日に300人以上の患者さんが大分県内の各所から来院する、大分こども病院。少しでも待ち時間を短くするために患者さんのスムーズな診察案内が求められますが、順番が来ても戻ってこられない患者さんが多く、順番通りに円滑に対応できないことが課題だったといいます。
「今まで使っていた順番待ち表示システムは、番号札を発券してQRコードを読み取ったら、今何番の人が呼ばれているのかがわかるシステムでした。呼び出し機能はなかったので、患者さんや保護者の方がサイトを見て毎回順番を確認しないといけませんでした」と、今までの状況を教えてくれました。
「matocaには呼び出し機能がついているので、当院では10番前になったら通知が届くように設定して使用しています。『今までは5~10分間隔でスマホを開いて順番を確認していたけれど、呼び出し通知が来るようになって、確認の手間が省けてストレスが減った』と患者さんから好評です」
一番のメリットは電話対応の軽減
「番号の順番通りに患者さんをお呼びして、待合室におられなかったら電話をかけて戻ってきてもらっていました。その電話作業がすごく負担で……」と、今までの苦労を語る麻生さん。matocaを導入してからは、それまで6割ほどしか順番までに待合室に戻ってこられていなかった患者さんが、なんと8割以上順番までに戻ってきてくれるようになったそうです。
「おかげで、今ではほとんど電話をかけて呼び出すことがなくなりました」と麻生さんはいいます。スタッフの業務量が減り、ゆとりをもって患者さん対応ができるようになりました。電話代も安くなり、経費削減にも役立っています。
「通常は待ち組数が10番前になったら通知が届くようにしていますが、忙しい時には15番前にタイミングを変更しています。緊急性の高い方を優先して治療し、順番が入れ替わった場合もLINE上でそのことが確認できるので、患者さんにも納得してもらいやすくなりました。全ての操作が簡単に行えるので、状況に合わせて臨機応変に対応できるのがmatocaのよいところだと感じています」と使いやすさにも満足されているようです。
夜間診療時のキャンセル対応ができるように
受付スタッフが一番神経を使う業務が、夜間診療の対応です。大分こども病院は365日24時間診察しており、18時以降の夜間診察は誰でも直接来院すれば受診できるスタイル。
しかし、病院の電話は18時以降は留守番電話に切り替わります。そのため、来院して順番を取ったけれども、待ち時間が長くて受診を諦める際に病院に連絡を取る術がなく、仕方なく無断でキャンセルをされる方も多くて困っていたそうです。
「日中同様、順番になっても戻られていない場合は電話で呼び出すのですが、夜間は間違い電話のリスクも高く、電話をかける作業はストレスがとても大きいものでした。matocaを導入した今では、LINEでキャンセルができるようになったため、無断キャンセルが減り、患者さんの管理がしやすくなりました。キャンセルの連絡をしたくてもできなかった患者さんのお悩みも解決されて、双方にとって良い結果になりました」
LINE登録者数は1カ月で5000人以上増加
matocaの導入前からLINE公式アカウントは開設されていましたが、登録者は2500人程度でした。それが導入して1カ月で7800人まで増加したそう!
「こんな短期間で5000人も増えるとは思っていなかった」と、麻生さんもとても驚いた様子でした。
LINE公式アカウントでは、職員による栄養学や保育情報の定期的な発信を行っています。それに加えてインフルエンザワクチン接種などの情報を載せたところ、電話での問い合わせが減り、スタッフの負担も削減されました。台風時の開院状況など、イレギュラー時の発信にも役立っているそうです。
matocaを導入して手間もコストも削減できた、大分こども病院。
今後のmatocaに期待することをたずねると、「医療に特化したサービスが増えると、より魅力的ですね」と教えてくださいました。
導入してまだ2カ月弱(2024年9月取材時)ですが、抜群の効果を感じているご様子でした。電話業務の大幅カットにより作業効率が上がったことで、これからさらによりよいサービスにつながっていくことに、期待が膨らみます。
※「QRコード」は(株)デンソーウェーブの登録商標です。
取材・文 尾西美菜子